手元に残るお金=売却代金-ローンの残債-諸経費
ということになります。
最終的に売りと買いが同時期になるように進めるのが買い換えの理想形です。売りが早く決まると売却価格が確定するので予算に合わせた物件探しが可能になります。ところが、自宅の引き渡しが早まってしまうので、購入物件が決まるまでの間、アパートなどに仮住まいすることになりかねません。購入物件探しをするかたわら仮住まい先を探し、引っ越しを2度行うことになります。敷金や礼金、毎月の家賃の支払いなどの費用もかさんでしまいます。買いが先になると住む家の心配はなくなります。しかし、購入代金を払いたくても売却代金が入らないので、買い換え口一ンを借りる必要に迫られます。そうなると最悪のケースでは売却物件と購入物件のローン返済、そして買い換えローンの三重返済をしばらく続けることになってしまうのです。
では、どうしたらよいでしょう。
自宅の売却が難航しそうなら売りを先行させる、購入物件を探すのに手間取りそうなら買いを先行させるというふうに、どちらかを早めに進めて最終ゴールが同時期になるようにするのが理想型です。
どちらを先行させるかは買い換えを予定している人の事情にもよりますが、おおむね住宅市況の動きで判断するのが基本です。住宅市況が低迷しているときは売り出し物件が市場にあふれている状態にあるので、購入物件は比較的探しやすい。そこでまず自宅の売りを先行させてある程度売却のめどが立ったうえで購入物件を探すようにします。市況が活発なときは条件の良い物件ほど売れ足が早いので買いたいと思う物件を先に確保し、それから売却を進めても好況の波に乗って自宅を売ることができるでしょう。
しかし、これは一般論で実際には次のような対応をとることがあります。
売却代金がそのまま新しい住まい購入の買い換え資金になるわけではありません。ローンの残債と諸経費を引いた額が買い換え資金になります。 費用は細かく整理すると次のようになります。
■諸費用の内訳
経 費 |
支払い額 |
---|---|
仲介手数料(限度額)+消費税 |
売買価格×3%以内+6万円 |
印紙代 |
印紙税…売買契約書に記載されている金額による |
抵当権抹消登記費用 |
抵当権抹消登記(登録免許税)…不動産1個につき1000円 |
ローンの返済 |
ローン残債 |
譲渡益課税 |
所得税、住民税 ※値上がり益などによって決まる |
住宅を売却するだけならば、最初購入した価格よりも売却価格が値下がりしていれば損になりけれど、買い換えすることを前提にすれば必ずしもそうは言えません。値下がりしているということは、市況の価格全体が下がっていると考えられるので、買い換え先をそれだけ安く購入できるということになります。 仮に4000万円の住宅を頭金800万円、借入金3200万円で購入したとする。毎月返済額は年利6.0%、30年返済として計算すると19万1840円となります。5年後にこの住宅を売却したとすると、ローンの残債はおよそ200万円減っていて3000万円。売却価格からこの残債を引いた金類が手元に残ることになります(※諸経費は簡単にするために無視します)。 以上を前提条件にして「値上がりしたとき」と「値下がりしたとき」のケースを見てみましょう。
媒介契約には「専任媒介」「専属専任媒介」「一般媒介」の3つのタイプがあり、依頼者は自由に選択できます。それぞれに一長一短があるので、どの媒介契約が優れているかは一概にいえません。住宅市況や売却物件の条件、あなたが置かれている事情によって、どの契約を結ぶかを判断することになります。
どの契約も次の2点は共通しています。
第1点は媒介契約の有効期間を3か月以内としていることです。3か月を超える契約はできません。ただ、依頼者の申し出によって更新することができます。
第2点は仲介会社が売却依頼を受けた物件について売り出し価格の意見をいうときは、取引事例と比較するなど合理的な方法でその根拠を示さなければならないことです。
■3つの媒介契約の比較
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依頼者の義務 |
仲介会社の義務 |
特 徴 |
---|---|---|---|
専任媒介契約 |
●他の仲介会社に重ねて媒介を依頼できない |
●指定流通機構への依頼物件の登録を行い、売買契約の成立に向けて努力する |
●依頼された仲介会社は、受託期間中他の仲介会社と競合しないので、積極的に営業活動ができる |
専属選任媒介契約 |
●他の仲介会社に重ねて媒介を依頼できない |
●指定流通機構への依頼物件の登録を行い、売買契約の成立に向けて努力する |
●依頼された仲介会社は、受託期間中他の仲介会社と競合しないので、積極的に営業活動ができる |
一般媒介系契約 |
●他社に重ねて媒介を依頼できる |
特になし |
●依頼された仲介会社は、他の仲介会社と競合するので営業が消極的になる |
依頼者は、媒介契約の有効期間(3か月以内)をはじめ、仲介手数料(約定報酬額)、依頼物件の概要(目的物件を表示)、売却価格(媒介価額)などの必要事項を契約書に記入し、署名・押印して契約を結ぶことになります。このとき仲介会社に、次の特約事項を入れてもらうと、あとあと仲介手数料をめぐるトラブルを未然に防ぐことができます。「この媒介契約により締結された売買契約がローン条項により白紙解除となったときは、当社は報酬を請求しないこととします。また、すでに受領済みの報酬については速やかに返還することとします。」売買契約が成立すると依頼者は仲介会社に仲介手数料を払うことになります。その後、買い主が当初予定していたローンが借りられなくなり、ローン条項に基づいて売買契約の白紙解除を申し出てきた場合は承諾しなくてはいけません。この特約は、このとき仲介会社に支払った仲介手数料を返還してもらうことを確保するためのものです。
買い換え時に必要な資金が一時的に用意できないときに、利用すると便利なのが買い替えローンやつなぎ融資です。融資期間は、1か月以上12か月以内の短期。
仲介会社の提携ローンで扱っていることが多いけれど、銀行などの民間金融機関でも同種の直接ローンを扱っているケースがあります。相談してみましょう。
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買い換えローン |
つなぎ融資 |
抵当権抹消等融資 |
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こんな時に利用 |
●購入物件の代金を支払わなければならないが、現在の住まいの売却が終わっていないとき |
●公庫や年金などの公的融資や社内融資を利用する予定だが、融資が下りるまで日にちがかかり、残金の精算ができず入居ができないとき |
●公的融資を利用して買い換え物件を買いたいが、現在の住まいに公的融資の残債があるので借り入れを精算したいとき |
融資限度額 |
100万円以上1億円以下(6000万円を超える場合は別途審査あり) |
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●物件の審査価格によって決定 |
●公的融資等の融資 決定額の範囲内 |
●買い主の公的融資等の融資利用額の範囲内で、売却物件の残債額とこの融資の利息額との合計額の範囲内 |
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借入期間 |
1か月以上12か月以内 |
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諸費用 |
●融資事務手数料・金銭消費貸借契約証書の印紙代・融資金の利息(日割計算)・ほかに買い換えローンでは抵当権設定仮登記費用など |
不動産流通近代化センターでは「価格査定マニュアル」を作成して、物件評価の方法について詳しい解説を加えています。一定の水準まで熟練した担当者がこの解説書に従って査定シートに記入していくと、だれが行っても同じ評価点(査定価格)が得られることになっています。
具体的に、どのようにしてあなたの家が査定されるのか、その仕組みを見ていくことにしましょう。
複数の会社に査定を頼んだところ各社によって開きが出るケースがありますが、他社とかけ離れた高い価格を提出した会社は、担当者がその地域や物件のことをよく知らないと考えていいでしょう。また、あまり安い査定価格も考えものです。
高い価格を出す場合は二つのことが考えられます。専任媒介契約を取ることだけが目的で、その後どんどん売り出し価格を引き下げる作戦に出ることがあります。一方で、その物件のことを熟知しており、営業力に自信があるゆえに高い価格を出してくることもあります。担当者とは徹底的に話し合って相手がどのくらい状況を把握しているのかをチェックすることが大切です。
不動産会社間には、売買物件をコンピュータや印刷物に登録して、お互いに条件に合う情報を読み出せる情報交換システムがあります。その中で国土交通大臣が指定した不動産流通機構が「指定流通機構」です。これは全国に4機構あり、売却希望者から「専属専任」「専任」の媒介契約を受けた仲介会社は必ずこの指定流通機構に物件を登録しなければなりません。不動産会社の多くは、この指定流通機構に加盟しています。
この指定流通機構には不動産流通標準情報システム「レインズ」があり、各地域の不動産販売に関する情報がコンピュータで結ばれています。したがって、1社に相談するだけで、多数の不動産会社に依頼したのと同じになるわけです。情報量が多く、常に更新されているので最新の価格動向に基づいた適正な価格での売買が期待できます。
売却物件に、ローン残債があり抵当権など第三者の権利がついていたら、売主は所有権移転時までにそれらの権利を抹消し、契約内容どおりの状態にしておかなければなりません。
抵当権を抹消するには、買主から受取る手付金や中間金を利用して、ローン残債を整理しておくか、それでも不足するようなら銀行などに相談して、一時的に「つなぎ融資」を受けるという方法もあります。
売り手と買い手が納得して決めた売買価格ですが、役所から「その価格は不適正」と指摘されることがあります。
国土利用計画法の規定で、一定の面積以上の土地を取引するときには売り主と買い主の連名で所轄の市町村に取引価格の届け出を行い、審査を受けることを義務づけています。
ただ、バブル期には地価高騰が激しかった大都市圏を中心に「監視区域」を設けて厳しく指導されましたが、近年は緩和・廃止が続出していて、一般住宅の場合は適用されないケースのほうが多いようです。
届け出は売買契約を結ぶ前に各自治体の担当窓口に置いてある「土地売買等届出書」に必要事項を記載し、必要書類を添付して提出します。審査期間は6週間以内。この間は売買契約を結べません。取引内容に問題がないと不勧告通知、取引価格が高すぎるなどと判断されると価格の変更や取引の中止などの指導を受けることになります。
売買契約締結後、ローンの解約・抵当権の抹消を行うために残債をすべて返済する必要があります。このときの資金をだれが負担するかは契約書の内容によります。買い主から受け取った売買代金を充当して抵当権を抹消し、物件を引き渡すというのが一般的です。これを、「同時決済」と言います。
買い主の資金繰りの関係で、残金決済・物件引き渡し前に抵当権を抹消する必要がある場合は「つなぎ融資」などを利用して、あらかじめ抹消しておくこともあります。このときはつなぎ融資の利息は売り主と買い主で折半するなど話し合いで決めることになります。
株や不動産、貴金属、車などを売って得た利益を「譲渡所得」と言います。不動産についての譲渡所得は、給与所得などの他の所得と切り離されて所得税と住民税が課税されます。
不動産を売却したときだけでなく、買い換えや交換、収容によって得た利益も、同様の方法で課税されます。
課税の基礎となるのは「譲渡所得」です。これは、次のように算出します。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
自分が住んでいる建物や土地(居住用財産)を売ったときには、譲渡所得から3000万円が控除されます。つまり、譲渡所得が3000万円以下のときには、課税されません。この控除は、所有期間にかかわらず適用されます。ただ、原則として土地のみの場合には適用されません。また、長期譲渡所得において通常差し引かれる100万円の特別控除は、この場合受けることができません。
細かな条件については、次の表を参考にしてください。
次の1から3のいずれかに該当する場合
1.現在住んでいる住宅を譲渡した
2.現在住んでいる住宅と一緒にその土地(借地権なども含む)を譲渡した
3.次の1~3のいずれかに該当する住宅や土地を、住まなくなってから一定期間内(3年を経過する日の属する年の年末まで)に譲渡した
1.災害などで滅失した住宅の土地
2.以前に居住していた住宅
3.以前に居住していた住宅と一緒に譲渡された土地
※居住用住宅を取り壊した場合には、1年以内に譲渡契約が締結される場合に限られる(その間貸し付け等の用途に使用していないこと)
※店舗兼用住宅の場合には、居住用部分のみが控除の対象となる
※居住用の家屋を2つ以上所有している場合には、主に居住しているものに限られる
次の1から6のいずれかに該当する場合
1.収用などの特別控除(5000万円)や居住用財産の交換・買い換えなどの特例、固定資産を交換した場合の特例などを受けている場合
2.前年か前々年に3000万円の特別控除や居住用財産の交換・買い換え特例、居住用財産の譲渡損失の繰越控除などを受けている場合
3.譲渡相手が次の1~3のいずれかに該当する場合
1.譲渡する人の配偶者および直系親族
2.譲渡した人と、譲渡された家に同居する親族
3.譲渡する人と内縁関係にある人、生計を同じくしている人など
4.譲渡した住宅や土地が次の1から3のいずれかに該当する場合
1.この控除を受けることだけを目的として入居した場合
2.増改築中の仮住居など、一時的な利用が目的であったもの
3.別荘など、保養、趣味、娯楽などを目的とするもの
5.土地だけを譲渡した場合
6.新規に購入した住宅に住宅ローン控除の適用を受ける場合
不動産の譲渡所得にかかる税率は、売却した不動産をどれくらいの期間所有したかによって大きく異なります。
所有期間が5年を超える不動産を売却したときの譲渡所得は「長期譲渡所得」。所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」となり、それぞれの課税方法が異なります。
短期譲渡所得では税率がきわめて高く設定されています。最低でも所得税40%+住民税12%の計52%と、実に長期譲渡所得の2倍です。
これは、所有期間の長い土地を放出しやすくして土地の供給を活発にする一方で、投機目的の土地取引を抑えて地価を安定させようとする狙いがあるためです。
それぞれの税額の算出方法は次のようになります。
(実際には、この他に条件によって、特別控除額があります)
所有期間5年を境に譲渡所得にかかる税率は変わりますが、注意したいのは所有期間の計算方法です。 不動産を取得した日から譲渡した日までが所有期間ですが、所有期間を計算する場合は、譲渡した年の1月1日時点で、取得した日から数えて5年を超えたかどうかで判定します。たとえば、平成14年の2月に譲渡した場合も、12月に譲渡した場合も、同じ平成14年1月1日で判定されます。 また、購入した日と譲渡した日についての判定は、売買契約日または引渡しを受けた日どちらを選択してもかまいません。長期譲渡所得のほうが短期譲渡所得より税率が低いので、所有期間を計算したときに長期譲渡所得となるような日を選ぶといいでしょう。
建物や土地の譲渡所得があったときには、翌年の3月15日までに確定申告をして、税金を納付する必要があります。
登記などの資料をもとに、税務署が「所得税の確定申告書(分離課税用)という書類を送付してきます。これに税務署で交付される「譲渡所得申告のチェックシート」や「譲渡内容についてのお尋ね」、「譲渡所得計算証明書」などの書類を添付して提出します。
このほかに、居住用の財産の3000万円の特別控除や、所有期間10年を超える居住用財産の軽減税率などの適用を受けるときには、譲渡した建物・土地の登記簿謄本(または妙本)、住民票の写し、譲渡した財産が所在する市区町村が交付する住民票(譲渡した日から2か月以上後に交付されたもの)などが必要です。
住民票の交付が受けられない場合には、戸籍の附票の写し、未交付の理由を説明した理由書、譲渡した財産に住んでいたことを証明するもの(光熱費の領収書など)を添付します。
譲渡取得について、税務署に確定申告をした場合には、市区町村役場に申告する必要はありません。